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  • 執筆者の写真三橋美穂

101. ただ“在る”ことに価値がある世界

(2017/04/01)



先日、新聞を読んでいた時のこと、私はある記事にくぎ付けになりました。そこには、重度障害者の海老原宏美さんが、小池百合子都知事に渡した手紙のことが書かれていました。

海老原さんは、平成28年度の【東京都女性活躍推進大賞】を受賞。進行性の難病「脊髄性筋萎縮症」を患いながら、NPO法人「自立生活センター東大和」理事長として、障害者の自立と生活を支えていて、その活動が評価されての大賞受賞となりました。

ここで、その手紙の内容の一部をご紹介します。

重度の、進行性の障害を生まれ持った私の使命は、華々しく活躍するパラリンピック選手や、個性的な芸術活動をおこなったり、起業したりする障害者のようにスポットライトを浴びて社会に広く知られるようなことのない、もっと重度の障害者の社会における存在価値を、確立することだと思っています。 私は、「価値のある人間と価値のない人間」という区別や優劣、順位があるとは思いません。価値は人が創り上げるもの、見出すものだと信じているのです。 樹齢千年の縄文杉を見て、ただの木でしかないのに感動したり、真冬、青い空に映える真っ白な富士山を見て、ただの盛り上がった土の塊にすぎないのに清々しい気持ちになれたりと、価値を創り出しているのは人の心です。 これは、唯一人間にのみ与えられた能力だと思います。 そう考えるとき、呼吸器で呼吸をし、管で栄養を摂り、ただ目の前に存在しているだけの人間をも、ちゃんと人間として受け入れ、その尊厳に向き合い、守っていくことも、人間だからこそできるはずです。それができなくなった時、相模原であったような、悲惨な事件が起こってしまうのではないでしょうか。 あるのは、「価値のある人間・ない人間」という区別ではなく、「価値を見出せる能力のある人間・ない人間」という区別です。 私たち、重度障害者の存在価値とはなんでしょう。重度障害者が地域の、人目につく場所にいるからこそ「彼らの存在価値とはなんだろう?」と周囲の人たちに考える機会を与え、彼らの存在価値を見出す人々が生まれ、広がり、誰もが安心して「在る」ことができる豊かな地域になっていくのではないでしょうか。

これを読んで、私は存在そのものに価値を見出せる人間でありたいと思いました。「役に立たないものは価値がない」という風潮が、価値がある存在にならなければと、人を焦らせ、競わせ、幸福感や心の平安を人々から奪っているのではないでしょうか。

優劣社会の中で、今、一番役に立たない人を切り捨てたとしても、今度は残った人たちの中から、最も役に立たない人を切り捨てようとするでしょう。そして人々は、いつか自分が切り捨てられるかもしれないという不安と恐怖の中にいたら、眠れないのも当たり前です。

また、人が一日の中で価値を見出しにくいのが「睡眠」です。もっと優れた人間になるために仕事をして、勉強して、人間関係を作ってと、活動時間を増やすために、睡眠時間を削ろうとします。

逆に眠りたくても睡眠時間が取れなくて、疲弊している人たちも大勢います。今、働き方改革が叫ばれていますが、表面的なことだけでなく、社会の価値観を根底から変える必要があるのではないでしょうか。人々がお互いに認め合い、尊重しあい、一人一人の存在そのものに価値を見出す世界。それを私は、創りたいと願っています。

それは理想論だと諦めたら、世界は変わりません。 諦めが強い人は、ぐっすり眠ることから始めましょう。 睡眠不足になると思考がネガティブになるからです。

先日、私の著書『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』が台湾で出版されたのですが、目を引いたのは、「ぐっすり眠って、すべて順調!」の部分。ぐっすり眠ると【煩悩がなくなる】とあるのです。

「煩悩とは、身心を乱し悩ませ智慧を妨げる心の働き(汚れ)を言う」 (Wikipediaより)

「なるほど~!」と、唸りました。ぐっすり眠って、心の汚れを落とし、前進ししながら新しい世界を創って行きましょう!! 障害者も、飢餓や貧困にあえぐ人も、すべての人たちの存在を認め合いながら、助け合い、分かち合う世界を。


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