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  • 執筆者の写真三橋美穂

143. “必要十分”でシンプルな暮らし

(2020/10/01)



先日、以前お会いしたことがある美容ライターの方から、オンライン取材を受けました。およそ15年ぶりだったので、覚えているか自信がありませんでしたが、モニター越しの彼女を見たら、懐かしい気持ちになりました。

取材は、まずコロナ禍での睡眠の変化についてや、睡眠によって得られるメリットを免疫、美肌、ダイエット、パフォーマンスの観点からエビデンスを交えてお話ししていきました。

30~40代女性の睡眠負債に関する質問には、厚生労働省が平成30年に実施した調査結果を示して、30代では35%、40代では46%が6時間足らずの睡眠しか取れていない実情を伝えました。

女性で最も睡眠時間が短いのは50代で、半数以上の54%が6時間未満と回答しています。10年前の最短は40代女性だったので、同じ人たちがスライドしていることになります。

現在の50代は、実はバブル世代。 私の仮説は「バブル世代の女性は眠らない」です。 冗談半分本気半分で話しながら、彼女も妙に納得したようでした。外側に快楽を求め、眠るのがもったいないという意識の女性が多いのが特徴です。

30代女性の睡眠負債が少ないのは、仕事よりもプライベートを重視する「ゆとり世代」のため、男性も家事や育児に協力するのが当たり前という意識が強いからだと思います。

6時間睡眠でも殆どの人にとっては不足していて、日本人は総じて睡眠負債を溜めています。それは子どもも同様で、中学生でも8~10時間の睡眠が必要だと話したら、彼女はとても驚いて、

「学校の宿題や塾、習い事があるから、そんなに睡眠時間をとることは絶対にムリですね…」

という諦めの言葉と、深いため息が出てきました。 そして私が答えたのは、こうでした。

「確かに今までの価値観の延長線上で生きていくとしたら、8時間の睡眠をとるのは難しいと思います。勉強も習い事も可能な限りやって、いろいろな能力を身につけていかないといけないですよね。競争社会の中で勝ち残っていくためには。

でも、これから先の地球環境のことを考えると、モノは必要十分になっていき、モノの消費に依存しなくても人々が困窮せずに暮らせる、新しい経済システムを作っていく必要があると思うんです。

そうしたら、人々に時間のゆとりが生まれて、必要十分な睡眠がとれるようになっていくし、私はそういう未来を作りたいです」

この言葉がとても印象的だったと、彼女から後にもらったメールにありました。

「最初から最後までとても有意義な取材で、15年ぶりでしたが、全然お変わりなくイキイキされていて、感動してしまいました」

と、うれしい言葉をいただきました。

これまでは、知識が多いことがよしとされる詰め込み型の教育だったので、「知らない=ダメなこと」という意識が、私たちには刷り込まれています。過去の延長線上の予測できる未来には安心感がありますが、初めて体験する未来(変化)には不安を感じるものです。

これから起きるであろう社会の変化を意図し、受け入れる準備ができている人が一人でも増えることが、社会を動かす原動力になると信じ、これからも機会があれば伝えていこうと思います。

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