• 三橋美穂

57. “セロトニン”と“メラトニン”の親密な関係

(2013/08/01)



先日、セロトニン研究の第一人者、東邦大学名誉教授、有田秀穂先生と直接お話しする機会がありました。多数の著書の中でも、「脳からストレスを消す技術」は20万部を超えるベストセラーになっています。

脳内物質セロトニンは、気持ちを明るくしたり、やる気を高める、筋肉に働きかけてよい姿勢を維持するなどの作用があります。また、うつ病の人はセロトニンが極端に少なくなることでも知られています。

セロトニンは、睡眠ホルモン「メラトニン」の原料にもなる、睡眠とは切っても切れない大切な物質。日中にセロトニンが活性化していると、夜ぐっすり眠れます。

セロトニンを増やす3つの基本は、 1、朝日をしっかり浴びる 2、リズム運動(ウォーキング、深呼吸、咀嚼など) 3、グルーミング(ふれあい)

「朝、起きたら、近所をウォーキングしながら太陽の光を浴びるのが一番だ」と、有田先生。

朝浴びる太陽光は、体内時計を調整する働きもあります。24時間より少し長めに設定されている人間の体内時計は、2500ルクス以上の明るい光を浴びると短くなり、リセットすることができます。家庭の室内環境で、照度が1000ルクスを超えることは、まずありません。非常に明るく感じるデパートやコンビニで1300ルクス程度。でも、太陽光のパワーはすごくて、曇りの日でも5千から1万ルクスあり、晴天の日は、何と10万ルクスにも達します。だから太陽光発電も可能なわけです。

直射日光を浴びなくても、晴天であれば、窓際1メートル以内で、2500ルクス以上の光を浴びることができます。朝食をとったり、新聞を読むのは、窓際でしましょう。そして出勤途中は、意識して日向を歩くようにします。

体内時計は、脳の視交叉上核にある主時計のほか、全身の臓器や一つ一つの細胞に末梢時計が存在しています。主時計の調整は、明るい光を浴びることですが、末梢時計の調整は、起床後1時間以内にとる朝食。主時計に末梢時計が同調して全身のリズムの調和がとれ、ホルモン分泌リズム・体温リズム・代謝のリズムが整って、1日をイキイキと過ごすことができます。

朝食には、セロトニンの原料になる必須アミノ酸のトリプトファンと、その消化吸収を助けるビタミンB6を含むメニューがお勧めです。大豆、赤身の魚と肉、バナナなどは、両方を含んでいます。セロトニンを脳内に取り込む、炭水化物も合わせて摂りましょう。

セロトニンは、夜暗くなるとメラトニンに変わり、体温を下げて熟睡へと導きます。細胞にダメージを与えて老化を早める“活性酸素”を除去する働きがメラトニンにはあるため、アンチエイジングホルモンとも呼ばれています。「午前中に浴びる30分の太陽光は、睡眠薬1錠分に相当する」と表現する研究者がいるくらい、太陽光はメラトニンの生成を助け、睡眠をサポートしてくれます。

逆に、夕方5時以降に明るい光を浴びると、体内時計を遅らせてしまい、なかなか眠気が起こらなくなります。オレンジ色の照明にして、就寝に向かって、徐々に照度を落として行きましょう。

今年2月に発表された研究では、照度約9ルクスの豆電球程度の明るさで寝ていた人と、照度3ルクス未満のほぼ真っ暗な状態だった人とでは、前者の方が肥満の割合が1.9倍も高かったそうです。光の刺激でメラトニンが減って眠りが浅くなり、食欲ホルモンのバランスが崩れてしまったのだと思います。照明はすべて消して、眠りましょう。

有田先生から聞いた話で一番驚いたのは、昼夜逆転生活で、明け方に寝て、昼過ぎに起きるような生活をしていると、睡眠中にメラトニンは分泌されていないということ。太陽光不足でセロトニンが生成されないので、メラトニン分泌によって眠くなるのではなく、ただ疲れたから寝ているだけなのだそう。このサイクルはうつ病の典型で、精気がなくなっている状態。

「朝は太陽の光を浴びて、体を動かし、夜は暗くなったら眠る」 この当たり前の生活が、生きることの基本でもあるのです。睡眠時間をとっているのに、日中に眠気が強い人も、セロトニン不足。もっと積極的に、太陽光を浴びましょう。セロトニンとメラトニンの仕組みを知って、今日からの快眠ライフに役立ててください。