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  • 執筆者の写真三橋美穂

76. 森を見てから、木を見て行動する

(2015/03/01)



最近、ウェブの記事で、睡眠にいいと言われていることを、いろいろ試している男性のレポートを、興味深く読みました。この男性が、これまで試したのは、

「寝る前にブルーライトを避ける」 「GABAやトリプトファンを摂取する」 「朝30分歩く」 「夜は暖色系の照明にする」。

これらの効果を、睡眠計を使って確認しています。

この中で、本人が効果を実感したのは、「朝30分歩く」ことと「夜は暖色系の照明にする」こと。暖色の照明は、テレビを見ながら寝入ってしまったり、お風呂に入らずに寝てしまうほど、眠くなると言っています。使い方を少し工夫すれば、よい睡眠が得られるでしょう。私自身も照明にはこだわっていて、昼は寒色、夜は暖色、さらに入浴後は明るさを半分くらいに抑えます。

逆に彼が効果を実感できなかったのは、睡眠によいとされる栄養素のGABAやトリプトファンを含む食品を摂取すること。GABAは気持ちを落ち着かせる成分で、トマト、じゃがいも、なす、かぼちゃ、みかん、発芽玄米などに多く含まれていて、GABAの含有量が多いチョコレートも売られています。トリプトファンは、睡眠ホルモンのメラトニンの原料になる成分で、バナナ、豆乳、牛乳、ヨーグルト、赤身魚、肉類などは、含有量が多いとされます。

この体験記では、GABAをチョコレート、ちりめんじゃこ、トマトから摂取していて、全体の栄養バランスが考えられていません。これは、「木を見て、森を見ず」の状態。私だったら、GABAは発芽玄米とかぼちゃから摂ります。今はまだ寒いので、体を温める冬野菜を中心に摂るようにします。かぼちゃの収穫時期は夏ですが、貯蔵によって甘みを増し、食べごろは秋から冬にかけて。「冬至に食べると病気知らず」と言われるほど栄養価が高く、かぼちゃは体を温める作用があるからです。

夏野菜のトマトを冬に摂りすぎると、体が冷えて免疫力が下がってしまいます。脂肪と糖質の塊のチョコレートは、気分転換に少し食べるのはよしとしても、食べ続けるのは問題です。睡眠にいい特定の栄養素だけに意識を向けるではなく、まず健康にいい食事=森は何かを考えるべき。この当たり前のことに、気がついていない人が意外と多いのです。

睡眠にいい習慣は、数えきれないほどありますが、まず「森」を見て全体を把握し、だんだん「木」に移行して具体的な行動を起こすと効果的。

例えば、「90分の倍数で起きるとスッキリ目覚められる」と言われるため、6時の起床から逆算して、6時間睡眠(90分×4)を取ろうとすると、12時に入眠することになります。そのタイミングを逃して、気づいたときには12時半になってしまったら、4時間半睡眠(90分×3)になる1時半まで待つ、そう言った男性が実際にいました。

これは実にナンセンス。普通の人の場合、4時間半では明らかに睡眠不足。目覚めのことだけではなく、睡眠全体を考えたら5時間半の方が疲労は回復します。さらに90分周期というのは平均値であって、実際には70~110分程度の幅があるうえ、就寝から入眠までにかかる時間も加味する必要があります。つまり「倍数」というのは、現実的ではないのです。

「夜の睡眠」を充実させるためには、「昼の活動」を充実させることが一番大きな「森」。それに対する「木」は、太陽の光を浴びて、朝ごはんを食べ、仕事や勉強、家事をしっかりこなし、運動して体を動かす。実に当たり前のことです。

この木は、森から見たらどうだろうか。 そう意識しながら、よい睡眠習慣を身につけて行きましょう。

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