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執筆者の写真三橋美穂

82. 枕とマットレスは一緒に選ぶ

(2015/09/01)



先月、『朝日新聞 be』の “かしこく選ぶ” というコーナーで、3回にわたって寝具選びのアドバイスをしました。1回目は「ベッドマットレス」、2回目は「敷き布団」、3回目は「枕」でした。寝具で最も重要なのは、体を支える敷き寝具と枕なので、そこにフォーカスを当てた内容です。

いろんなタイプの寝具があるし、体格や体質、姿勢によって合うものが違います。それに今まで使ってきた寝具の“慣れ”も加味して選ぶので、寝具選びって本当に難しいと思います。

私はもともと枕に特化した寝具メーカーで働いていたので、枕に重点をおいていますが、枕の高さはマットレスの硬さで変わるため、それを配慮する必要があります。お店で試す時のマットレスの硬さと、自宅のマットレスまたは敷き布団の硬さが違うと、お店で試したときのようにフィットしない、となってしまうからです。

マットレスが柔らかいと体全体が沈むので、合う枕は低くなります。硬いとあまり沈み込まないので、それよりも高めが合います。高めといっても、みなさんが思っているよりも、ずいぶん低いです。

体型がスリムな人は、フィットする枕が低いので、マットレスが硬いと、横向きのときに肩が圧迫されてしまいます。スリムな人は、トータルで考えると、柔らかめのマットレス&低めの枕が合います。

体重が重い人が柔らかいマットレスに寝ると、お尻が沈んでしまいます。腰まわりだけで、体重の約44%を占めるため、体のバランスが崩れてしまうからです。体格がいい人は、硬めのマットレス&やや高めの枕が合います。

腰痛の人は体型を問わず、「かため」のマットレスがいいと思い込んでいる人が多いです。いわゆる『かため神話』、その理由を、私はずっと考えてきました。私自身は硬いマットレスで寝ると、腰が痛くなってしまうので、みんなが硬いマットレスが腰にいいというのが不思議だったからです。

そして、私がいたった結論は、「使っている枕が高いから」ということでした。枕が高いと背中が丸くなって、腰椎が伸びるため、硬めのマットレスだと腰がピタッとくっついて楽に感じます。

高い枕をして、柔らかいマットレスに寝ると、腰が落ちてしまうので、腰痛がひどくなります。その結果、柔らかいマットレスは腰に悪いというイメージが定着したのだと思います。

低めの枕が合うスリムな人が、硬めのマットレスに寝ると、腰が反って浮いてしまいます。横向きのときにも肩が圧迫されて痛いので、マットレスは柔らかいものが合います。

マットレスを選ぶときは、マットレスだけに目を向けがちですが、高い枕のままだと、その枕を使うことの弊害(肩こり、いびき、首の痛みなど)を解消することができません。

私がマットレスのアドバイスをするときは、その人の体型と試すマットレスの硬さに合わせて、ピッタリ合うよう調整した枕をスッと置いて寝てもらいます。そうすると、その人の表情がフワッと和らぎ、体の力が抜けるのがわかります。一緒に使う枕の寝心地で、マットレスの寝心地も変わってしまうからです。

マットレスと枕がトータルでフィットしている状態を一瞬で創りだせるのが、寝具のプロです。ぜひ、そういう人からアドバイスを受けて、最高の寝具を手に入れてください。

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