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  • 執筆者の写真三橋美穂

92. ぐずる赤ちゃんを寝かしつける方法

(2016/07/01)



子どもがすぐに眠ると話題のベストセラーで、三橋監訳の『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』(飛鳥新社)が、2016年 上半期 書籍ランキング総合1位になりました。(オリコン&Amazon)

『おやすみ、ロジャー』がこれだけ支持されている背景には、寝かしつけに困っているママパパが実に多いということ。共働きが当たり前の現代では、子どもがスッと眠りに入るかどうかは、親の睡眠時間にも関わってきます。

先月、聖路加国際大学が発表した研究によって、幼児の昼寝が「長い・遅いと、夜 眠らなくなる」ことが証明されました。健康な1歳半の幼児50名の活動記録を解析したところ、昼寝の時間が長いほど、また昼寝の終了時刻が遅いほど、夜間の睡眠時間が短くなり、就寝時刻も遅くなることが確認されたのです。

ヒトの睡眠は、一日に何度も細切れに眠る新生児の「多相性」から、成長につれて、夜間まとめて眠る「単相性」に、変わっていきます。1歳半になったら、昼寝は昼食後に1回(60~90分)程度で充分でしょう。さらに成長するにしたがって、だんだん昼寝もしなくなっていきます。

また、今年5月に発表された、オーストラリア・フリンダーズ大学の研究では、ぐずる赤ちゃんを寝かしつけるには、「放っておくことが効果的」と結論付けられています。


2016/6/13付 J CAST記事より引用>  生後6か月~1歳4か月の赤ちゃん43人(男の子16人・女の子27人)と母親に協力してもらい、次の3つのグループに分けて実施した。 (1)「泣いても寝るまで放置する」(14人) 慣れるまでは、乳児が激しく泣いた場合、親のベッドに入れてもいいが、1分以内に子どものベッドに戻す。乳児が泣いても部屋の明かりはつけない。だんだん泣きっぱなしのままベッドに放置するようにする。 (2)「寝かせる時間を徐々に遅くする」(15人) 乳児が寝付くまでに30分以上かかった場合は、次は就寝時間を15分遅らせる。そのようにして徐々にベッドに入れる時間を遅らせていく。 (3)「今までどおりの方法をとる」(14人) これは(1)(2)と比較するための対照グループ。研究チームから乳児の睡眠についての知識は受けるが、(1)(2)の方法をとらず、基本的に今までの寝かしつけ方を継続する。 1年後、3つのグループの赤ちゃんが寝付くまでにかかった時間を比較した。 すると、(1)「泣いても寝るまで放置する」グループは、(3)「今までどおり」のグループに比べ、平均で13分短縮し、赤ちゃんが夜間に起きた回数も減っていた。 (2)「就寝時間を遅らせる」グループは、(3)「今までどおり」のグループに比べ、約10分短縮したが、夜間に起きた回数は同じ程度だった。

記事の表現は、赤ちゃんがぐずっていても「放置する」となっていましたが、これは「放棄する」「無視する」のではなく、子どもの力を信じて「そのまま放っておく」のだと思います。

以前、ある勉強会に出たときに、1歳半の子どもを連れた30代の女性が参加していました。その女性は、子どもにお菓子や飲み物を与えながら、自分の傍から離れないように、子どもに意識を注いでいました。小さい子どもは何をするかわからないから、他の人たちに迷惑をかけてはいけない、という思いがあったようです。

子どもは行動が制限されて、自分が動きたいように動けず、だんだんグズッたり、そわそわして落ち着きがなくなってきました。

それを見ていた勉強会の先生が、 「肯定的に放っておきなさい。構わないこと。」 と言ったのです。

その瞬間、その場に自由な雰囲気が生まれ、子どもは動き回りながらも穏やかで、参加者全員がそれを包み込むような静かな温かさの中で、会が進んで いきました。

赤ちゃんが眠るときにグズるのは、まだ眠り方を知らないからです。わが子の力を信じて眠るまで放っておくことで、自然に眠り方を身につけていきます。つまり、「あるがまま」にしておくことが、眠りの質を高めるのだと、科学的にも証明されたといえるでしょう。

赤ちゃんがグズると何とか機嫌をとろうとするのは、「泣かせてはいけない」という意識が自動的に出てくるからです。 放っておいたほうがいいという研究結果があるから、泣いているのは気になるけど、見て見ないふりをする。これは不安のエネルギーを発しているので、逆効果です。

「肯定的に放っておく」 これは、自分自身に自信がないと難しいかもしれません。

そんなときは、赤ちゃんが泣いているのが気になっている、その自分がいることを認識することから始めましょう。そして、子どもと自分を信じて、グズっているわが子を静かに見守ってみてください。

最後に、米国睡眠医学会(AASM)が6月に発表した子どもの睡眠時間の指針は下記の通りです。

・4~12カ月:12~16時間(昼寝の時間も含む) ・1~2歳:11~14時間(同) ・3~5歳:10~13時間(同) ・6~12歳:9~12時間 ・13~18歳:8~10時間


こちらも参考に、“信”がある場の中で、子どもの眠る力を育くんでいきましょう


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