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  • 執筆者の写真三橋美穂

168. つくる責任、つかう責任

(2022/11/01)



先月、感動的なプレゼン動画に出会いました。

短期間で急成長が見込めるスタートアップが集結して、事業プレゼンを行う大会「ICCサミット KYOTO 2022」で優勝した企業の、7分間の動画です。



プレゼンをしていたのは、寝具の引き取りと再生事業「susteb(サステブ)」を手がける株式会社yuni(ユニ)代表の内橋堅志氏。

「素材の廃棄をなくし、日本を廃棄大国から資源大国へ変える」というビジョンを掲げています。



内橋氏はIT企業で働く機械学習エンジニアでしたが、実家が寝具メーカーで学生時代から手伝っていたため、お父さんから寝具の廃棄問題について聞かされていたそうです。



寝具は年間約1億枚も焼却処分されていて、ひとり一枚捨てている計算になります。アパレルのリサイクル率は37%に対し、寝具のリサイクル率はたった2%。焼却したら、灰と二酸化炭素になって埋め立てて終わりですが、寝具は天然素材の宝庫です。実に、羽毛ぶとん1枚に水鳥200羽分の羽毛が、綿布団1枚に綿畑100坪分の綿花が使われています。



寝具の廃棄をなくすだけではなく、莫大な資源に変えていくビジネスモデルを持っていると内橋氏。しかもそれは循環型です。


【引き取り】⇒【再生素材化】⇒【製品に活かす】⇒【引き取り】・・・



まず、寝具を集めるところから始めたところ、一番集まっているのは自治体の廃棄待ち倉庫だとわかりました。どこの自治体も寝具の廃棄に困っていて、サービス開始後すぐに、多数の自治体と連携することができたそうです。



自治体が自分たちで行う償却費用は平均508円に対し、引き取り金額は485円。自治体は引き取り依頼をする方が合理的で、サステブは引き取り費用をもらった段階で再生コストをペイできます。つまり、素材の販売前に利益が出せる構造になっているのです。



従来は圧倒的に手間がかかるために捨てられていた寝具を、エンジニアとしての経験を生かして、マテリアルリサイクルのプロセスをゼロから構築しオートメーション化。特許技術を含む洗浄滅菌を経て素材として再生されるため、高価になりがちな再生素材を、他社素材と比べて40%のコストダウンを実現できました。



さらに引き取った寝具の再生率は、なんと90%! 回収をたくさんしても一部しか再生できなければビジネスモデルとして成り立ちませんが、価格と再生率でイノベーションを起こすことに成功した、と内橋氏。



そして、プレゼンの最後にこう呼びかけています。


「焼却処分場はなくていいもの。負の遺産です。

 僕らが創る未来に、焼却処分場はいらない。

 みなさんは未来を選ぶ力を持っている方々です。

 僕は必ずやり遂げます。応援してください」



私は寝具の廃棄問題のことを以前から気にかけていたので、こんなにも情熱的に取り組んでいる若者がいることに、胸を打たれました。しかも従来の延長線上ではなく、まったく新しい発想からのイノベーションに、希望の光が見えました。



サステブ以外にも、寝具業界でリサイクルの取り組みは少しづつ進んできています。

フランスベッドやニトリが簡単に分別できるマットレスを発売したり、エアウィーヴはJALのビジネスクラスに使われているマットレスパッドを完全リサイクルすると発表しました。



エアウィーヴの場合は、現状では廃棄よりも再生コストが3割ほど上がるそうですが、何事も取り組むことから始まります。そこから課題を見つけて解決していけば、コストダウンにもつながっていくでしょう。



持続可能な消費と生産を構築することを目的としたSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の「つくる責任」に立場をとる寝具メーカーが増えてきたことをうれしく思います。



「つかう責任」を意識した消費行動を選択する人たちが増え、循環型の社会になることを願っています。



最後に、私が感動した動画をぜひご覧ください!


【動画】(7分22秒)





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