204. シフトワーカーの健康を守る睡眠法
- 三橋美穂

- 11月1日
- 読了時間: 4分
(2025/11/01)
夜勤や交代制勤務は、社会を支える重要な仕事です。一方で、不規則な勤務は心身に大きな負荷をかけます。昼間に強い眠気が出たり、夜間の睡眠が浅くなったり、集中力が続かないと感じたことはありませんか。これらは単なる”疲れ”ではなく、体内時計の乱れによって起こる現象です。
人間の体には、約24時間のリズムを刻む体内時計があります。その中枢は脳の視交叉上核という部分にあり、「いつ眠るか」「いつ代謝を上げるか」「いつホルモンを出すか」を緻密に管理しています。
この時計は、朝の光を浴びることでリセットされ、「昼に活動し、夜に休む」よう全身に指令を出します。しかし、夜勤や早朝勤務などで昼夜が逆転すると、光の刺激や食事時間がバラバラになり、体内時計が外界と同調できなくなります。
その結果、脳が「今は昼なのか夜なのか」を正しく判断できなくなって覚醒と休息の切り替えが混乱し、さまざまな不調を引き起こします。
◎昼間の眠気・集中力低下
体が「夜モード」のまま昼を迎えるため、脳の覚醒レベルが上がらず、反応速度や判断力が落ち、ミスや事故につながりやすくなります。
◎睡眠が浅くなり中途覚醒が増える
夜勤を終えて朝に寝ようとしても、外光によってメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が抑えられ、眠りが浅くなります。途中で目が覚めたり、熟睡できない状態が続きます。
◎ホルモンと代謝の乱れ
体温やインスリンなどの分泌リズムが崩れるため、食後の血糖値が上がりやすくなり、肥満・倦怠感・集中力の低下につながります。
◎メンタルの不安定化
睡眠不足とリズムの乱れは、自律神経系の調節を不安定にし、イライラや抑うつ傾向を強めます。
リズムが乱れると、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が乱れ、一日中、体は軽い戦闘モードが続きます。これが慢性疲労の原因。「不規則」は体にとって“ストレス”なのです。
このようなリスクがあることがわかっても、シフト勤務では「完全に整える」ことは不可能です。大切なのは、乱れを最小限にし、体の回復力を維持することです。
以下のポイントを実践してみましょう。
1、光のコントロール
【夜勤前・夜勤中】
明るい照明の下で過ごし、体を“昼モード”に保つ。
【夜勤明け】
帰宅時にサングラスを使い朝日を遮断すると、メラトニンの分泌を保ち、帰宅後に眠りやすくなる。
ただし車の運転をする場合は、眠くなると危険なので避ける。
睡眠をとった後は光を浴びる。
【休日】
起床後15分は自然光を浴びて体内時計をリセット。
2、睡眠のとり方
【夜勤前の仮眠】
出勤前に30分~3時間の仮眠で眠気を軽減。
【夜勤中】
深夜2~4時に20分程度の仮眠を取ると、眠気のピークを越えやすい。
【夜勤明け】
帰宅後は暗めの部屋で軽い食事と入浴をすませ、すぐに寝る。
睡眠時間が短くても、暗く静かな環境で深く眠ることを優先する。
眠れない場合は、運動で体を動かして疲れさせることで、入眠しやすくなるケースもある。
3、カフェインの使い方
カフェインは「眠気を抑える補助」として活用する。
摂取のタイミングは勤務開始~勤務中盤までが目安。
それ以降の摂取は帰宅後の睡眠を妨げるため避ける。
4、食事の工夫
夜中の食事は、消化の良い軽いものを選ぶ(おにぎり・スープ・豆腐など)
深夜帯に高脂肪・高糖質の食事を取ると、夜勤中の眠気と倦怠感が増す。
帰宅後すぐ眠る場合は、食べ過ぎを避け、軽く済ませる。
5、休日の過ごし方
夜勤明けの休日は、完全に昼型へ戻そうとしない。
就寝・起床時刻を勤務日に近づけ、体内時計の変動幅を小さくする。
午後に短時間の外出や日光浴を取り入れ、覚醒リズムを維持する。
6、睡眠環境を整える
遮光カーテンやアイマスクで光を遮る。
音が気になる場合は耳栓をする。
中途覚醒が多い場合は、ゴロゴロしながら眠くなったら寝るくらいの心持ちで過ごすとよい。
不規則な勤務は避けられない現実ですが、光・睡眠・食事・休息のタイミングを意識すると、体のリズムが整いやすくなります。
具体的な方法は、AIにサポートしてもらうとよいでしょう。
1週間の勤務時間を入力して、
「これにあった本睡眠と仮眠のとり方(長さとタイミング)、光の浴び方、カフェインと食事のとり方を教えて」
と聞いてみてください。
体内時計を乱さない努力は健康を維持し、仕事の安全性・集中力・判断力を守るための基本条件です。毎日の習慣を少し変えるだけで、不規則な勤務の中でも、確実にパフォーマンスは向上します。色々試して、自分の最善を見つけてみてください。
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