206. ‟私”の生き方から、‟公”の生き方へ
- 三橋美穂

- 4 日前
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更新日:8 分前
(2026/01/01)
先月、感動したテレビ番組があります。
それはテレビ東京系『ガイアの夜明け』で、テーマはジェネリック(後発医薬品)業界の再編。
今、薬局などで出される薬の約9割はジェネリックで、値段は先発薬の約半額。国は医療費削減のため、ジェネリックの普及を推し進めています。
国内の製薬会社は約330社。そのうちジェネリックが約180社を占めています。大手は数社で、ほとんどは中小メーカーで成り立っている業界です。このジェネリック薬の供給が、2020年から深刻な停滞に直面しているというのです。
小林化工に端を発した品質不正問題と、それに伴う行政処分が生産体制を直撃しました。背景には、毎年の薬価改定による収益性悪化と、多種多様な薬を少量ずつ作るという業界特有の低効率な構造があります。
ジェネリック業界のある中堅メーカーは、取り扱う約300品目の薬を、9つのラインで作っています。薬の種類を変えるたび、型替えと呼ばれる部品交換が行われ、その間は製造ラインはストップ。さらに部品交換の後、残留物がないか隅々までチェックするので、次の製造が始まるのは4時間後。このような少量多品目生産の効率の悪さが、薬を増産できない大きな障壁となっています。
こうした中、業界構造そのものを変革しようとする試みが、Meiji Seika ファルマの主導により始まりました。乱立する中小メーカーの製造品目を集約し、生産効率を最大化する「共同製造プラットフォーム」の構築を目指すといいます。
つまり同じ成分の薬を各社が作っていたのを、
・Aの薬を作る会社
・Bの薬を作る会社
・Cの薬を作る会社
と分担し、販売は全社が行えるようにする試みです。
私が感動したのは、この再編を主導する Meiji Seika ファルマの小林会長の言葉です。
「まともに供給できない状態を数年も続けると言うのは、製薬企業として、そして経営するものとして、恥ずかしい限り。少量多品目生産という構造的な問題を放置するわけにはいかない。
医薬品の安定供給は個社の利益を超えて公益に資する話。公的保険制度の中で、国の予算の中で、社会保険の予算の中で、事業を営んでいる。貢献するのは義務だ」
小林会長の言葉には、自社の利益追求だけでなく、日本の医療インフラを守るという「公の精神」を強く感じました。
このとき思い出したのは、平和や環境に積極投資しているユニクロ柳井氏の言葉です。
「平和でなければ商売はできない」
世界中に工場や店舗があるユニクロにとって、どこかで紛争が起きれば、綿花が届かず、工場は止まり、店は開けなくなります。平和を享受し、生活を楽しむ「中間層」がいなくなれば、服を買うという消費行動そのものが失われます。「平和を願う」ことは慈善活動ではなく、ビジネスを成立させるための根幹であると考えているのです。
小林会長が「薬の安定供給は義務」と語るのも、柳井氏が「平和」を語るのも、「社会という土台が崩れたら、自社も存在できない」という高い視座を持っているからだと思いました。
この考え方は、決して遠い世界のリーダーたちだけの話ではありません。私たち一人ひとりにとっても、大切な生き方の指針ではないでしょうか。
私たちはつい、自分の損得や目の前の忙しさに心を奪われがちです。でも、私たちが夜、安心して眠りにつけるのは、病気になれば薬が手に入り、着る服があり、そして何よりそれらを享受できる「平和な社会」という土台が、足元にしっかりと存在しているからです。
「社会という土台が崩れたら、自分も存在できない」
この言葉は、ビジネスの成功法則である以上に、私たちがこの不透明な時代を生き抜くための真理のように思えます。
自分の幸せだけを追求する「私」の生き方から、周囲の環境や平和に責任を持つ「公」の生き方へ。視座を拡大することは、自分のためだけに生きることよりも、ずっと強く、揺るぎない力を与えてくれるでしょう。
「公の生き方」は、大きなことに挑戦するだけではありません。私が最近意識しているのは「ハートを開く」こと。たとえ気分は落ち込んでいても、ハートを開いて挨拶や会話をしていると、エネルギーが循環してその場に明るさが生まれます。これも一つの「公の精神」だと思っています。
このような小さな公の行動が、巡り巡って、自分自身の人生という土台を豊かに、そして強固なものにしてくれるのだと信じています。
さぁ、あなたは何から始めますか?
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